テクノアークしまね デジタルコンテンツ制作支援室

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特別寄稿 著作権のツボ

第1回 第2回 第3回 第4回

前回まで、著作物は他人のいわば財産であり、他者の創作した著作物を使用する場合には、事前に許諾を得ることが必要であること、許諾を得る相手は著作権者であること、著作者人格権に関係するような使用をする場合には著作者の同意が必要であること等を説明してきた。著作者と著作権者は同じであることが多いが、財産的な権利である著作権は譲渡することが出来るので、著作者と著作権者が別の場合もあることも第2回で解説した。では、著作物を使う際に許諾を得るには具体的にどのようにしたらよいか。著作権に関していわば素人である一般の方々は、この点が一番分からないところであり、知りたいところであろう。これが良く分からないのでどうしても、「どうしたら許諾を得ずに著作物を使うことができるか」「この程度なら許諾を得なくてもよいでしょう」という質問が出てくることになるのであろう。実際に法律(著作権法)では、許諾を得なくても著作物を使っても良い場合が定められている。今回は、この点について解説する。

第4回 「許諾なく著作物が使える場合」

著作権には期間がある

小説を書いた人に無断でその小説を出版し、勝手に儲けることが許されるならば、小説家は小説を書いて生活をしていくことが出来なくなる。第三者が絵画の絵葉書を作成し、勝手に売りさばいて儲けて、画家に 1円もお金が入ってこないとすれば、それは不公平なことであろう。このようなことを避けるために著作権が定められている。

では、紫式部の「源氏物語」やシェイクスピアの「ハムレット」を出版するのに著作権者の許諾が必要であろうか。「モナリザ」の絵葉書を作成するのに、誰から許諾を得たら良いのであろうか。実は、これらの場合には許諾を得る必要はない。著作者に対しては、その著作物に対して著作権が与えられているが、この著作権は無期限に認められているものではない。著作権は、その権利が認められる期間(この期間を「保護期間」という)が定められている。

もともと、著作物や著作物を含んだ文化そのものは先行の文化に基づいているものである。小説は、言語を用いなければ書くことができないが、言語は長い年月をかけてその言語を使う人々が生活の中から作り上げてきたものである。小説家を目指す人々は、先輩の小説家たちの文章を研究し、学んで自らの小説を書くのが普通である。絵画や書道においては、名作を模写することから修業が始まる。著作者を保護することは必要であるが、その人が作った著作物を永遠に保護することは妥当とは言えない。

だいたい、200 年前の著作者の作品の許諾を一体誰に取ったら良いのか、だれが権利者たり得るのかという問題がある。そこで、著作権法では、著作者の保護のために著作権を与えると共に、保護期間を定めて、その期間内のみ権利を認めている。保護期間を過ぎたものは、パブリックドメインといって、社会全体の財産となる。むろんこれは、知的財産権についてであって、物理的な「物」についてではない。

著作権の保護期間が切れたからと言って、自分が所有している絵画の所有権が国に召し上げられるわけではない。パブリックドメインになった著作物は、許諾なく出版したり、上映したり、演奏したり、インターネット上で使用したりすることが出来るということである。

では、その保護期間は何年であろうか。基本的には著作者が死亡してから 50年間その著作者の著作物は保護されることになっている。二人以上の著作者が共同して創作した著作物(共同著作物という)については、最後に死亡した著作者の死後50年経過するまでが保護期間である。なお、歌謡曲の作詞と作曲を別々の人が行った場合、作詞と作曲はそれぞれ別に使うことが出来るので(その作曲に対して別の詩をつけることも出来るし、その詩だけを独立して使うことも出来る)共同著作物とはならない。

複数の著作者が共同して一つの著作物を創作した場合に、その著作物が共同著作物となる。ビートルズの曲の大半は、作詞作曲ともジョンとポールの合作として発表されている。この場合は、二人が協力してひとつの曲を作詞作曲したのであるから共同著作物となる。ジョンは既に亡くなっているが、ポールは存命で活躍中である。二人が共同して創作した曲と詞の著作権は、ポールの死後 50年間存続する。この死後50年間の計算であるが、死亡した年の翌年1月1日から 50年間を計算する。従って、同じ年に亡くなった人の著作物はすべて同じ年の12月31日に権利期間が満了することになる。

では団体名義の著作物の場合はどうであろうか。日本では、会社の仕事としてその業務に従事する人が作成した著作物については、一定の条件のもとに会社が著作者となる規定がある。著作○○会社とか○○省と表示されているのを見た人も多いであろう。この場合は、その著作物が公表されてから50年間が保護機関である。この場合の計算方法も、著作者の死後の場合と同様で著作物が公表された翌年の1月1日から50年間を計算する。

映画の著作物は特別で、公表後70年間権利が保護される。ここでいう映画の著作物とは、劇場用映画だけではなく、テレビドラマやドキュメンタリー、バラエティー番組(生放送でないものに限る)など、映画の効果に類似する視覚的または視聴覚的効果を生じさせるものが含まれている。但し、物に固定されている必要があるので、テレビの生放送番組は入らない。テレビゲームやコンピューターゲームも、映画と同じような効果を生じている限り映画の著作物に当たるという最高裁判所の判決が出ている。

なお、外国の著作物の場合、その国が第二次世界大戦の連合国側の国であった場合、戦時加算といって、1941年12月7日からその国との間で日本が平和条約を結ぶまでの期間を保護期間に足すことになっている。戦争中は、戦争の相手国の著作物の保護はしていなかったから、その期間を追加する必要があるというものである。敗戦国である日本には適用されず、日本が連合国側の国の著作物に戦時加算をする義務を負っている。その期間は国によって違うが、おおむね11年から12年である。

世界には、日本よりも長い保護期間を定めている国が多数あるが、条約の定めにより、日本においてはどの国の著作物であれ、日本の著作権法で定める保護期間だけ保護すればよいことになっている。但し、日本よりも保護期間の長い国においても、日本の著作物は日本の保護期間までしか保護されないことになっている。

その他にも著作権者の許諾なく著作物を合法に使える場合が

今回は、著作権には保護期間が定められており、その期間が過ぎたものについては基本的に自由に使えるということを説明した。著作権法では、それ以外でも許諾を得ずに著作物を利用することができる場合が定められている。文化の発展や公共の利益のために、著作者に与えた著作権を部分的に制限して、特別なケースには著作物を許諾なく使えるようにしているのである。これら著作権の制限については、今後説明をしていく。

上原 伸一

元朝日放送著作権部長、民放連著作権専門部会委員として権利者団体の交渉等に当たる。1997年から著作権関係条約討議のため、WIPO(世界知的所有権機関)の会合に出席。文化庁文化審議会著作権分科会国際小委委員会委員、国士舘大学知財大学院客員教授。個人プロデューサー。ミクロネシア研究家。

もっと知りたい方は・・・

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