テクノアークしまね デジタルコンテンツ制作支援室

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特別寄稿 著作権のツボ

第1回 第2回 第3回 第4回

第2回では、講演やセミナーでは、「どうしたら許諾を得ずに著作物を使えるか」という質問が多いと書いた。さらに、「この程度なら使っても大丈夫ではないか」という質問も多い。許諾の際には、何らかの許諾料を支払うことが通常であるが、許諾料そのものの問題以上に、何とか許諾をとらないで済ませたい、という考えの人が多いようである。これには、許諾料が分からないので、許諾を求めたら相当な金額を要求されるのではないかという「恐れ」もあるようだ。さらに、インターネット隆盛の現代において、ネット上では無料で様々な情報や資料を手に入れることができるし、ちょっとしたパソコンの知識があれば、ブログやホームページを通じて個人が自由に情報を発することができる。情報発信という点では、日々技術的な壁が低くなり、本当に誰でも簡単に発信ができるようになってきている。物理的には、発信する情報の中で他人の著作物を使用することは極めて簡単であり、その方がブログやホームページの内容が豊かになることが多い。そのため、手軽に他者の著作物をネット上で利用したいという人が多いのも現実である。

第3回 「著作物を使うには」その2

他人のものを使うときには了解を得る

前回も書いたが、改めて確認しておきたいのは、「他人のものを使うときには了解を得るのは当たり前」ということである。家や土地はもちろんのこと、鉛筆・消しゴムやボールペン、自転車や自動車など他人の物を使うときには当然、事前に了解を得ている。著作物でも同じことである。この簡単な原理に気がつけば、著作物使用の許諾を得るのが億劫だ、という感覚もぐっと減るのではないだろうか。歩いて30分ぐらいのところに急な用事で行かなければならなくなった時、誰かの自転車がそこに置いてあったとしても、黙って乗っていく人はまずいないだろう。急いでいて、なおかつ、その持ち主が誰で、どうやればすぐに連絡がつくか分からない場合には、その自転車を使うことをあきらめるのが普通である。それどころか、どんなに急いでいても、その辺に多数駐輪してある誰のものか分からない自転車を使いたいと思うことすらまず無いであろう。他人のものを勝手に使ってはいけない、ということが「常識」として染み込んでいるからである。

著作物に関しては、この常識が必ずしも社会全体に確立していないところがあるようだ。有名陶芸家が創った花瓶をその家から黙って持ってきて、自分の家の床の間に花を生けて飾るのは問題がある、ということは誰でも分かるであろう。物理的な花瓶が存在し、それを持ち出してしまうと、所有者が使うことが出来なくなることが容易に理解されるからである。ところが、無断でその花瓶を撮影して、写真を自分のホームページに載せることについては、問題を感じない人がかなりいる。花瓶そのものは、元通りであり、陶芸家はその花瓶を飾りに使うことも販売することもできるので、何の迷惑もかけていないと考えるからであろう。 ところがそうとは限らない。その陶芸家は、その作品の出来に満足しておらず、他人に売るには不十分と考えて自宅で使用していたのかもしれない。その場合、本人として納得していない作品を、世の中に広められることは不快なこととなろう。逆に、大いに気に入っていて、それだけは売らずに自分で使い、孫に譲ろうと考えていたのかもしれない。だとすると、その作品をホームページで見て、売って欲しいという人が何人も現れたら、これまた迷惑である。或いは、新しい表現様式を研究中であったかもしれない。要するに、「物」でなければ勝手に使っても、迷惑もかけなければ、問題にもならないということではない。そこで、著作物の様々な使い方に応じて著作権が定められた。

誰に許諾を得るの?

著作物は、それが創作された時から何の手続きも必要とせずに保護される。著作物を創った人、即ち著作者は、その著作物に対し著作権が付与される。従って、著作者に許諾を得るのが最も分かりやすいという話になる。

ところが、著作権の中には、財産権としての著作権と著作者人格権がある。財産権としての著作権は、普通の財産と同じように他人に譲渡することが出来る。この場合、著作者と著作権者が別になる。

雑誌記事や写真について、その作品の著作権を出版元が買い取ってしまうということは必ずしも珍しいことではない。また、劇場用映画やテレビ番組、アニメーションなどは、その製作会社の経済状況により、著作権を他者に売ってしまっていることがある。海外の映画会社では倒産や合併吸収がよくあるので、著作権者が変わるということは珍しくない。

こうした場合でも、著作者は、著作権を誰に譲渡したかは知っているので、まずは著作者に聞いてみれば良い。著作権を譲渡してしまって、別に著作権者がいる場合は、そのことを教えてくれるはずである。*1さらに、著作者は、財産権としての著作権を譲渡した後でも、著作者人格権を有している。公表権(未公表の自らの著作物を公衆に提供・提示することを決める権利)、氏名表示権(実名、ペンネームなどの変名あるいは無名で自らの著作物を公衆に提供・提示する権利)、同一性保持権(自らの著作物及びそのタイトルを意に反して改変されない権利)である。前述の、陶芸家の花瓶の写真を勝手にホームページに掲載するのは、公表権の侵害となる。陶芸家の名前を本人の意向と関係なく表示した場合は、氏名表示権侵害になる可能性がある。さらに、デジタル写真だからといってホームページ上の見栄えを良くするために、若干色を補正したりしたら、同一性保持権侵害となり得る。この著作者人格権は、著作者のみに与えられるもので、他人に譲渡することができない。著作者に、連絡して許諾を得るようにすれば、著作者人格権の了解は得られるし、財産権としての著作権を譲渡をしている場合でも、著作権者の情報を得ることはできるであろう。

現実には、著作者が分からない、或いは著作者の連絡先が分からない、ということが多いであろう。そうした場合は、どのようにしたらよいかについて、次回以降さらに説明をしていく。

*1 逆に、自らが著作者であることを利用し、著作権を既に売ってしまっているのに、まだ自分が著作権を持っていると偽り、既に他人のものになっている著作権を売りつけたのが、小室哲也の詐欺事件である。

上原 伸一

元朝日放送著作権部長、民放連著作権専門部会委員として権利者団体の交渉等に当たる。1997年から著作権関係条約討議のため、WIPO(世界知的所有権機関)の会合に出席。文化庁文化審議会著作権分科会国際小委委員会委員、国士舘大学知財大学院客員教授。個人プロデューサー。ミクロネシア研究家。

もっと知りたい方は・・・

■文化庁 著作権制度に関する情報 ホームページを見る
■テクノアーク1階 一般社団法人島根県発明協会 ホームページを見る