テクノアークしまね デジタルコンテンツ制作支援室

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特別寄稿 著作権のツボ

第1回 第2回 第3回 第4回

第1回では、著作権とは著作物について著作者に権利を与え、著作者を保護するシステムであり、著作権とは、一口に言って「自らの著作物を他人に勝手にされない権利である」と著作権制度の基本を説明した。この権利は、前回も書いたように、著作物のあらゆる使用方法について与えられているということではない。社会のシステムに応じて必要に応じ使い方毎に著作者に「支分権」として与えられている。但し、現行の著作権法では現在行われている著作物の利用のほとんど全てについて権利が与えられているので、通常、著作物を使用する際には、著作権者(著作権は著作物が出来上がると同時に著作者に与えられるが、著作者人格権以外の財産的な著作権は他社に譲渡することが出来るので、著作者と著作権者が違うケースが出てくる)の許諾を得ることになる。

第2回 「著作物を使うには」その1

著作物とは?

著作権の許諾を得るという場合には、まず最初にすべきは、使おうとする素材やコンテンツが著作物であるかどうかをチェックすることである。著作物の定義については既に説明したが、ここではもう少し具体的に見てみたい。

著作物として保護を受けるのは、表現であってアイデアではないと説明したが、現実の場面では意外とこの区分けが十分には認識されていない。放送番組やテレビCMを新たに作成しようとする場合には、複数のプロダクション等に募集をかけることが多い。その場合、応募する側は企画を立て企画書にまとめて相手に提示する。企画書は、「思想または感情」を「創作的に」「表現」したものであるから著作物として保護される。しかしその中に書かれている企画そのものは、基本的にはアイデアであり、著作権で保護されないのが通常である。この違いが理解されておらず、企画がパクられたから、著作権侵害だと言ったり、逆に企画書が著作権で保護されていないのはおかしいと主張されることがよくある。どちらも間違いである。とはいっても、他者の企画をいくらでも盗用して構わないと言うことではない。不正競争防止法や民法の不法行為で罰せられたり、損害賠償を求められたりする可能性は大いにある。

本や番組のタイトルも著作物とは認められていない。本の紹介をするたびに、タイトルを表示するのに、著作者の許諾を得なければならないとしたら、これは不合理であろう。また、タイトルは短いものが多いので、内容に応じて同じタイトルになってしまうことは有り得る。実際、同じタイトルで内容の違う映画や本はかなりある。例えば、「旅愁」でネット検索をしてみれば、必殺シリーズの主題歌、童謡、横光利一の小説、アメリカ映画等が出てくる。これも、よく売れている本や映画のタイトルの有名性にただ乗りするようなことをすると、著作権法ではなく問題になることがあるので、そちらは別途注意する必要はある。もっとも、山頭火の自由詩のような短い詩や俳句などをそのままタイトルに使った場合には、著作権が及ぶので許諾なく使うことはできない。

では、名画を上手に模写した絵画はどうであろうか。絵画の修行は模写から始まると言われており、見事な模写も相当作成されている。専門の鑑定人や遺族が見ても明確に区別がつかないほど良く出来ているものもあるし、本人が区別がつかないといった例もあるそうだ。そうなると立派な美術品といえるのではないか。美術品なら著作物として保護を受けることになるのではないだろうか。ところがそうではない。確かに見事な表現であり、美術品の域に達しているとはいえるであろうが、自らの「思想または心情」を「創作的に」表現しているわけではない。著作権法の観点から言えば、まさに究極の複製品である。最近では、デジタル技術の発達により、音楽CDや映像DVDの完全な複製が可能になっているが、アナログ時代では、コピーしたものは元の音や映像に比べて品質が劣化していた。しかし、絵画の世界ではアナログの手段によりまさにデッドコピーともいうべきものが遥か昔から作成されていたのである。

他者の素材やコンテンツを使う場合、どのような対応が必要かを知るためには、まず、それが著作物に当たるかどうかを吟味する必要がある。

著作物を使うには

では、使おうとしている他者の素材やコンテンツが著作物である場合にはどうしたらよいか。答えは極めて簡単である。著作権者の許諾を得れば良いのである。ところが、著作権のセミナーなどで質問を受けると、どうしたら許諾を得ずに使えるかいう趣旨の質問が多い。著作権というのは著作物に対する財産的な権利である。他人の財物を使う時に、その所有者に断らないということは考えられない。これに対し、近年、経済学者たちからは、通常の消費財とは違って使っても減ったり無くなったりしないのだから著作物の場合は扱いが違って当然、という声も聞こえる。成る程、それはそれでひとつの理屈には思える。しかし、他者の万年筆を使いたいと思ったら、通常持ち主に断る。この場合、万年筆を借りて使っても万年筆はそれほど減らないし、無論なくなりもしない。自動車であればなおさらであろう。通常、借りる時には了解を得るだけではなく、何らかのお礼をすることが普通である。万年筆や車の場合、持ち主によっては使用を断られることがある。他者が使うと、使い勝手が変わってしまうため、それを強く愛好している人は他人に触らせないと言うことがある。実は、著作物でも似たようなことが言える。あまりに安易に使われると価値が下がったり、あきられてしまうこともある。著作物でも、使われることによって変化したり価値が減ずることが有り得る。

一般的には、経済学者の理屈よりは、お金を払うのがいやだ、いくらかかるか分からない、誰に許諾を求めたらよいのか分からないというような事情が先行しているのが実情であろう。それでは、具体的にどのように権利処理をしたらよいのか、他者の著作物を使用する場合には必ず許諾を得なければいけないのか、といったより具体的な点については、次回以降順に説明していきたい。こうした部分を是非知っておきたいということがあれば、質問を頂ければ出来るだけ本コラムにおいてお答えしたいと思っている。

上原 伸一

元朝日放送著作権部長、民放連著作権専門部会委員として権利者団体の交渉等に当たる。1997年から著作権関係条約討議のため、WIPO(世界知的所有権機関)の会合に出席。文化庁文化審議会著作権分科会国際小委委員会委員、国士舘大学知財大学院客員教授。個人プロデューサー。ミクロネシア研究家。

もっと知りたい方は・・・

■文化庁 著作権制度に関する情報 ホームページを見る
■テクノアーク1階 一般社団法人島根県発明協会 ホームページを見る